思考回廊

その時感じたことを誰かと共有するため、あのとき感じたことを振り返るため、そんな私的ブログはじめます。

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景気対策における政府と日銀の役割

 以下の文章は、私が支持する経済政策のフレームワーク『リフレ政策』について、できるだけ平易に説明してみようと試みたものです。経済政策や景気対策といえば、まず公共事業や減税が浮かびますが、これら政府が行う「財政政策」とは別に、中央銀行すなわち日銀が「金融政策」もまた重要な役割を担っています。しかし、金融政策の内容はなかなかわかりにくいところがあります。かつて公定歩合の変更についてニュースで流れることがありましたが、これは金融政策の一例です(今は制度が変わり、公定歩合は使われていません)。また、最近の米国の経済ニュースではQEという用語が頻出します。これは米国の中央銀行であるFRBが実施した政策で、日本語では「量的緩和」と呼びますが、これも金融政策の一つです。
 こうした金融政策の機能を理解しようとすると、数式や抽象的な概念をいくつも引っぱりだしてこなければなりません。しかし、ここではかなり大雑把に説明してしまいました。この文章で初めて金融政策に関心をもたれた方は、改めて書籍などをご覧になられることをお勧めします。
 本稿では、金融政策の機能の説明を試みるとともに、財政政策と金融政策の相互作用についても言及しています。財政政策と金融政策の相互作用に着目し、整合的に行うことを「財政・金融一体政策」と呼ぶことがありますが、私はこの整合性が重要だと考えます。どこまでうまく伝えられるか、それ以前にどこまで私が正確に理解しているのか不安もありますが、何かの足しになればと思いつつ、拙稿を公開します。


景気対策における政府と日銀の役割 ー 「財政政策」と「金融政策」

景気対策の2本の柱 ー 「財政政策」と「金融政策」
 景気対策における政府と日銀の役割は大きい。不況のとき、政府は公共事業や減税で(財政政策)、日銀は金利低下の誘導で(金融政策)、景気を刺激する。逆にあまりに好況になるとバブルを誘発するので、景気が回復するにつれ上記の政策は緩めていき、過熱すれば逆の政策をとることも必要となる。すなわち安定的な経済成長を図るためには、景気の波に応じた適切な政策が必要となる。

「財政政策」とは景気循環にあわせて政府支出を加減すること
 政府の財政政策を景気循環に照らし合わせると、「好況のときに集めた税金で、不況のときに公共事業を行う」のが理想である。歳入と支出の時間にズレがあるので、これを国債を発行することで調整する。つまり不況のときに国債を発行して政府支出を増やし、好況のときに政府支出を減らして国債を償還していくわけである。
 財政政策はGDPを直接加減するものであるが、GDPに占める政府支出の割合を考えれば、それだけで景気を動かすのは容易でないことがわかる。そこで民間の消費や投資を間接的にコントロールするのが金融政策である。

「金融政策」とは金利を調整することで民間の消費や投資を誘導すること
 金融政策とは端的にいえば金利の調整である。例えば、金利を下げれば消費や投資が増え、金利を上げれば減るというように、金利の調整をもって民間の消費や投資の量を誘導することができる。不況の際には金利を下げて消費や投資を活発化させ、逆に景気が過熱気味の際には金利を上げて抑制を図る。

投資判断をおこなうときは金利と物価の関係に着眼する
 直感的には金利が安いと投資活動が活発化することは理解しやすいが、現状をみるとゼロ金利を維持しているにも関わらず投資は冷えている。一方、80年代は金利は高いにも関わらず投資は活発だった。これはどういうことか。実は金利だけでなく、物価との関係に注目すると理解できる。
 簡単な例をあげてみる。物価が上昇するとき、特殊なケースを除けば企業の売上や個人の所得も平均的には上昇する。仮に物価が10年で20%上昇し、所得も同じだけ上昇するとみなす。ここで月収が40万の個人が年2%の利率で20万円を借金したとする。月収に対して50%の金額の借入である。この借入を10年後に元利一括返済をすれば、24万円を支払うことになる。10年後の所得は物価と同様に20%増し48万円になっていることから、返済金額のは月収の50%となる。つまり金利が物価上昇率と一致しているときには、所得に対する負担感は変わらないことになる。
 もし同じ利率の借入を物価上昇率が0%のもとで行えば(所得の伸びも0%とする)、10年後の返済額24万円は10年後の月収40万円の60%にあたり、負担感は金利相応に増えることになる。このように消費や投資に影響を及ぼす金利とは、額面の金利(名目金利)ではなく、物価上昇率の影響を除外した金利、すなわち実質金利ということになる。実質金利の定義は以下のとおりとなる。

 実質金利=名目金利ー物価上昇率

デフレ問題とはゼロ金利政策のもとでも実質金利の負担感が大きくなってしまうこと
 日銀が行う金融政策とは、金利の調整によって民間の消費と投資をコントロールするものだが、不況のときに実質金利を下げるには、名目金利を下げるか物価上昇率をあげるかいずれかとなる。日銀はその両方に影響を及ぼす手段を持つが、比較して容易なのは名目金利を下げることである。ところがゼロ金利政策をとっている現在は、名目金利をこれ以上に下げることができない。では金利は投資意欲が湧くほどに下がっているのかというと、物価上昇率がマイナス、すなわちデフレであるために実質金利が名目金利以上の負担感のあるものとなってしまっている。これがいわゆるデフレ問題である。

ゼロ金利政策のもとで実質金利を下げるには量的緩和で物価上昇率をあげるしかない
 日銀が物価上昇率を動かすには、市中に流通する通貨量を加減するという手段がある。一般に通貨の量が増えれば物価は上昇する。しかし市中の通貨は日銀の発行する紙幣だけではなく、より大きな預金がある。預金量は銀行の貸出量に連れて増えるので、投資の活発化そのものが物価の上昇を促す側面もある。
 日銀が紙幣の発行量を増やし、投資の活発化を誘発して通貨全体の量を増えることを促し、物価を上昇させる政策を「量的緩和」という。ゼロ金利政策のもとでなお実質金利を下げようと考えたとき、日銀のとりうる政策は量的緩和のみである。

市場は投資判断に物価上昇率の予想値「期待インフレ率」に注目する
 ここで紙幣の発行量を増やす程度の物価上昇率が、投資が活発化して銀行の貸出量を増やすまでの実質金利の低下をもたらすかという疑問が出る。ここは争点になることが多い。景気回復の局面では、物価の上昇は消費や投資の拡大の後から追いかける。それでは実質金利を政策的にさげることはできないのか。ここで実質金利の定義式に戻る。

 実質金利=名目金利ー物価上昇率

 この式の「文字」からは読み取れない視点がある。それは市場が先行きを予想して投資判断に織り込むということである。物価が景気回復に遅れて上昇することは広く知られているため、投資判断をする際に物価上昇率の予想に注目する。このように市場が注目する将来の物価上昇のことを期待インフレ、それを年率で数値化したもものを期待インフレ率という。期待インフレ率を使うと投資判断をする際に注目する実質金利の定義式は以下のようにおきかわる。

 実質金利=名目金利ー期待インフレ率

「期待インフレ率」を動かすため中央銀行は「インフレ目標」を約束する
 ここまで述べた金融政策をまとめてみる。実質金利を下げるためには、まず名目金利を下げる。しかし名目金利はゼロより小さくできないので、次に物価上昇率をあげることを考える。その手段として日銀は紙幣を発行するが、日銀が直接発行できる紙幣は市中の通貨の一部にすぎないため、あわせて市中銀行の貸出量の増加を促さなければならない。物価上昇率は景気回復に遅効するが、市場は物価上昇率ではなく、その将来予想すなわち期待インフレ率を投資の判断に使用する。
 よって日銀は実質金利を下げるために期待インフレ率を動かそうとする。すなわち一定のインフレが起こるまで名目金利をあげず、紙幣の発行量を増やす(量的緩和)など、物価の上昇に寄与する政策を続けることを市場に約束する。これが各国の中央銀行が採用する金融政策「インフレ目標」である。なお残念ながら、現時点で日銀はインフレ目標を採用していない。

「景気回復なきインフレ」を金融政策で起こすことはできない
 インフレ目標は実質金利を下げ民間の消費と投資を促す政策であるが、景気が回復することなくインフレがだけが生じることはないのかという疑問があるかもしれない。しかし既に述べたように、日銀が紙幣を発行するだけでは物価上昇率への影響は限られており、銀行の貸出量が増えて初めて物価は上昇する。さて、銀行が景気に明るい見通しをもつことなく貸出量を増やすことがあるだろうか。つまり景気が回復することなくインフレが生じることは、金融政策の結果としてはありえないと言ってよいだろう。
 逆に景気回復なきインフレ、いわゆるスタグフレーションは、大災害などで国の生産能力が極端に低下し、不況でなお物不足という状況が発生するなど極めて限定的な状況で起こる。日本は阪神淡路大震災や東日本大震災を経験したが、スタグフレーションは見られていない。スタグフレーションの実例としてオイルショックや第二次オイルショックのもとでの米国があげられるが、その原因も中東での戦争と革命という特殊なものであり、その原因の解決とともにスタグフレーションも収まっている。

「景気回復をともなうインフレ」を起こせるかは日銀への信頼次第
 金融政策で「景気回復をともなうインフレ」を起こせるかは、日銀の政策が市場にどれだけ信頼されるかにかかる。約束した政策を途中でかえるかもしれないと思われれば、市場は予想に基づき行動することができなくなる。「期待インフレ率」は日銀への信頼なしには生まれ得ないである。日銀はすでにゼロ金利政策も量的緩和も実施している。それでなお期待インフレ率が上昇しないのは、市場がゼロ金利政策の継続を信用していないか量的緩和の規模が不十分と考えている証左である。
 インフレ期待を生むには中央銀行がその意思を明確に示すことが必要である。先のインフレ目標はただ目標を示すだけのものではなく、市場の信頼を得るためのツールとなっていることが重要なポイントである。これを踏まえると、日銀がインフレ目標を採用しないことがどのような意味を持つかを想像できるだろう。

日銀と政府が協調しないと期待インフレ率は動かない
 景気の回復という共通の目的をもつ政府と日銀が歩調を合わせることもまた期待インフレ率を高める。日銀がいくらインフレ目標を示し、果敢に期待インフレ率を高めようとしているとき、それと同時に景気を刺激すべく財政支出を増やせば、市場は景気の回復をより固く信じるようになり、期待インフレ率は高まる。逆に政府が景気の腰を折るような政策を進めれば、市場は期待インフレ率はあがらないと考えるだろう。
 冒頭述べたように金利の誘導による景気の回復は金融政策ー日銀の主たる役割であるが、ここでみたように財政政策ー政府もまた期待インフレ率に影響を及ぼすという意味で金融政策を左右する。それでは現在の政府は日銀に協調的といえるか。

デフレ不況のもとでの財政再建は金融政策の手を縛る行為
 現政府の最も重視している政策は言うまでもなく「社会保障と税の一体改革」であろう。現在の財政収支では年金制度を維持することができず、その維持のために増税が必要であるという考えに基づいている。増税分の一部は社会福祉事業として財政支出にまわる可能性はあるが、トータルとしては財政赤字の縮小にあてられるだろう。しかし最初に述べたように、景気循環の点からみれば「好況のときに集めた税金で、不況のときに公共事業を行う」のが財政政策の基本である。不況のもとでの増税は、財政再建を優先して景気回復を犠牲にするもしくは後回しにすることに他ならない。
 市場が増税は景気にマイナスであると考えれば、期待インフレ率を押し下げてしまうだろう。現在、日銀は長らく不況の末にゼロ金利政策を採っているが、れにも関わらずデフレの為に実質金利は高止まりしている。名目金利を下げることが出来ない中、期待インフレ率をあげることは日銀に残された唯一の手段といってよい。その状況において政府が財政再建を進めるということは、日銀の金融政策の手を縛るにも等しい。

財政再建のためにも政府は増税すべきではない
 最後に財政再建について。財政悪化をもたらす財政支出の増加にしても税収の減少にしても、その原因は不況の長期化にある。現政府は財政再建を喫緊の課題として増税を進めているが、景気回復が遅れればそれだけ税収減が持続する。財政政策を景気回復に優先させる政策は自己矛盾を抱えるといえる。それでも増税を進めるのは、税収増よりも税率増に主眼があるのだろうか。財政再建を進めるためには、まず財政支出を抑制できる状況、すなわち不況からの脱出を実現すべきである。
 景気対策を担う政府と日銀、両者が実施する財政政策と金融政策、これらが整合すれば市場は景気の回復を強固に信じ、期待インフレ率が上昇して実質金利を押し下げる。実質金利の低下は消費と投資を回復させ、銀行の貸出量を増やし、後追い的に物価上昇率も上がってくる。その頃には目に見えて景気は回復し、財政支出も徐々に抑えて、国債の償還へとシフトしていけるようになるだろう。失業率が下げどまり、余ったマネーが行き先に困る頃、増税により経済成長を一定の範囲に収めるとともに、本当の財政再建が図られ、『リフレ政策』は出口を迎える。


【付録:平易な言葉で説明するのが難しいので個別に調べてほしい重要経済用語】
 ・フィッシャー方程式 : 「実質金利=名目金利ー期待インフレ率」という式
 ・貨幣数量説     : 貨幣の流通量が増えると物価が上昇するという理論
 ・信用創造      : 銀行の貸出量が増えると貨幣の流通量が増える仕組み
 ・流動性の罠     : 利子率がゼロ近傍になり名目金利を下がらなくなる状態
 ・デフレギャップ   : 経済全体における需要不足、物価上昇が景気回復に遅効する原因
 ・インフレ目標    : 中央銀行が安定的な物価上昇率の実現に向け責任をもって取り組む目標
 ・物価安定の理解   : 日銀が示す安定的な物価上昇率の基本認識だが実現に責任は持たない
 ・レジーム転換    : 政府・日銀が戦略を変更すれば民間経済も対応して戦略を変更すること
 

復興増税ーーーあえて増税するなら

【新聞】復興財源、消費増税が軸 数年間の時限措置 首相が意向

 東日本大震災の復興財源について菅直人首相は消費増税を軸に検討する意向を固めた。消費増税は数年間の時限措置とし、被災地復興に充てるため増発する国債の償還財源と位置づける。6月に第1次提言を出す首相の諮問機関「復興構想会議」でも、増税論議を深めてもらう考えだ。
(中略)
 菅政権は、4兆円規模の2011年度第1次補正予算案は国債増発に頼らない方針だが、これを大幅に上回る規模の第2次以降の補正では国債増発も容認する。その際、首相は償還財源もあわせて検討する意向で、課税ベースが広い消費税を念頭に制度設計に入る考えだ。
 政権は現在、2~3年間の時限措置として、現在5%の消費税率を1~3%引き上げることを検討している。税率1%で約2.5兆円の増収となり、増税分をすべて復興費に充てる算段だ。ただ、消費税は地域を分けて増税することが難しく、被災地の個人や企業も負担増は避けられない。このため、一定額を被災者に還元する案、復興目的を明確にするため「復興債」を別勘定にして消費増税分を償還に充てる案――などが検討されている。

(2011.4.16 朝日新聞より)


 昨年の参院選で消費税増税を財源とした掲げ、そして敗北した菅内閣が復興事業の財源として再び増税論を持ち出している。財政再建が「できるものならやった方がいい」のは確かであるが、長期にわたりデフレ不況に苦しく状況において、増税がもたらすものは景気の低迷と更なる税収の落ち込みである。まずは経済の回復を優先すべきであり、復興財源は国債の増額で賄う(国債は市中消化もしくは日銀直接引受)のが妥当、デフレを脱却しない限り、増税の出番はないというのが、私の基本的なスタンスである。
 しかし、菅内閣が復興構想会議を立ち上げ、復興財源を増税に求める、さらにその税目は消費税だというような話をここ数日みかけると心が折れてきそうになった。今朝はtwitterで「そこまで増税したいなら勝手にしろ、もう知らん」と書きたくなる衝動をかろうじてこらえたのだが、かわりに「あえて増税するなら」というつぶやきをした。本エントリはそれを元に加筆したものだが、増税に反対の立場の人間が行った思考実験として捉えて頂きたい。

 復興事業の財源を増税に求めることは次の2つの点ではなはだまずい。まず被災地の復興とは被災者の生活再建であり、それはライフラインの復旧や住居の建直しのみならず、職場となる企業が再び活動して産業が活性化して個々人の収入が増えるというところまでが必要である。すなわち復興には経済的な回復をも含むわけであるが、その点、増税は消費を抑制することを通じて回復を妨げる効果をもつ。
 2点目は、被災していない地域もまた已然としてデフレ不況下にあり、増税がデフレを再加速するようなことがあっては共倒れになりかねないということである。今回の震災で被災地の工場が停止することで他の地域の工場もまた止まってしまったように、被災地とその他の地域の経済はサプライチェーンでつながっている。被災地以外の経済が低迷すればそれは被災地にも及ぶ。すなわち復興のうち経済的な回復については日本全体での底上げもまた必要ということになる。

 そのような状況において「あえて増税するなら」なる思考実験をした一つの理由は今朝の新聞各紙でその税目が消費税であると報道されたからである。一言で増税といっても、それが景気に及ぼす影響は税目により異なる。消費税は景気へのマイナス効果という点では最悪の税目である。文字通り消費するほど払う税であり、これを増税すると企業や家計が増税前と同額の支出をしても、GDPにつながるネット(税抜き)の消費額は落ちてしまう。収入が増えないまま増税分だけ物価があがるということも消費を抑制する心理的な影響を生む。このように消費税の増税は消費の低迷に直結すると言える。
 比較のために相続税の増税を想定すると、より節税をしようと意識が働くため消費や投資が前倒しされる。できるだけ多くの資産を次の世代に残そうと思えば、年額110万円という課税点を超えない贈与を繰り返したり(消費性向が高い層に移転される)、事業用不動産を購入したりする(不動産の相続評価額は多くの場合、不動産の取得に要する費用を下回る)。増税の結果、税額が増えた分はやはり消費を抑制するが、一方で消費を前倒しする点では景気にプラスに働くことになる。ただし、相続税はもともと課税点が高く、相続を受けた人のうち実際に税を支払う人はわずか数%に過ぎない。復興事業の税源を極めて一部の層に転嫁することについては是非があるだろう(課税点をゼロまでさげるという発想はあるかもしれないが)。

 個人的には「あえて増税するなら」法人税および所得税である方が良いように思う。というのも消費を低迷する効果が消費税と比較すると相対的に小さい点に加え、「非被災地から被災地への再分配」が比較的スムーズに進むからである。
 まず一つ目の消費への影響であるが、法人税は収入から費用を控除した利益に対する課税であるため、節税をしようとすればより支出を増やした方が良いことになる。企業が後々に価値が残る資産取得や教育訓練を説教的に行う理由のひとつは節税である。所得税の場合は個人事業主であれば法人税と類似の効果をもたらす。ただしサラリーマンの場合は費用計上(控除)できるものが極めて限定的であり、こうした効果が小さい点は注意を要する。
 二つ目の「非被災地から被災地への再分配」であるが、ここは価値観にもよるので賛否が割れると思われるが、私は一定の妥当性があると思っている。復興事業は一時的に巨大な需要を生み出し、景気に対してプラスの影響を及ぼす。その効果は被災者のみならず広く日本全体に及ぶ。しかし復興事業はそもそもが「非被災者(企業)と公共セクターの資産の破壊」に伴うもの。その復興事業の恩恵を非被災者が受けるとすれば、その一部は被災者に還元されるべきという考えも成り立つだろう。なお、この視点についてはいずれ別エントリでも言及したい。

 法人費用税と消費税を増税した場合、その効果は被災地とそれ以外の地域で違いがある。被災地の企業や個人事業主は震災により施設や仕掛品に損傷を受けるため、それらの除却損が発生する。また復旧のためにも多くの費用を投入すると考えられることから、膨大な損金が発生すると考えられる。従って、増税をしても利益が圧縮されるため、被災地以外の企業と比べると増税の影響は小さくなる。一方、消費税を増税すると、復旧に必要な費用や施設再建のための資産取得の全てが増税の対象となってしまい、かえって被災地の企業の方が不利になりかねない。
 ただしサラリーマンの場合は、既に書いたように、計上できる費用が限定されるため増税の影響を受けてしまう。これを避けるためには、住宅の再建費用は損金に計上できる等の特例を設けるなどの工夫が必要だろう。
 このように増税の税目を法人税・所得税とした場合、消費税と比べると消費の抑制効果が小さく、かつ増税の影響が被災地において軽減され、結果的に被災地外から被災地への再分配が実現することとなる。

 以上、「あえて増税するなら」という思考実験を経てみると、現在の復興増税議論は増税が被災地内外にどのように影響を及ぼすのかという点についての言及がまだまだ足りないように思える。これだけ急速に増税は現実味を帯びていることから、推進派であれ反対派であれこうした点の分析と議論をするのは良いことだと思う。そして、反対派の一人としていいたいのは、「消費税の増税に求めるのは最も悪手なので絶対にやめてほしい」ということである。


津波から逃れるための最低限の知識

 今回の東北地方太平洋沖地震では多くの人命が津波により失われました。そして昨日もマグニチュード7.4、最大震度6強クラスの余震が起こり、津波警報が発令されました。結果的に津波による犠牲者はありませんでしたが、深夜、大規模な停電が発生する中での避難は大変困難なものだったと思います。
 東北・関東では今後も大きな余震が続き、津波を警戒しなければなりません。またそれ以外の地域でも、今回の震災に関わらず、津波のリスクが高いといわれているところは多くあります。
 そこで本エントリでは実際に大地震が起こった際に、津波から逃れるために最低限知っておいた知識を紹介します。出典は巨大災害、津波災害の専門家である河田恵昭先生(人と防災未来センター所長、関西大学教授)の著書、『津波災害ー減災社会を築く』です。

河田恵昭『津波災害ー減災社会を築く』 P106

 避難は徒歩が原則である。まず、津波の恐れがあるときに、どこに避難すればよいかを事前に調べておく。近地津波の場合は、市町村からの避難勧告が間に合わない恐れがある。大津波が来襲するところは、地震の震度も6弱から6強であるから、素人判断しても間違うことはない。1分以上、3分程度揺れたら間違いなく津波がやってくる。避難場所は原則、地区の小学校か中学校である。わからなければ、市町村の防災課か、なければ総務課に問い合わせればよい。

 短い文章にエッセンスが詰め込まれていますが、多少その背景となる知識を補足します。
 まず避難は徒歩が原則とは、車で逃げてはいけないということです。昨日の余震もそうでしたが、地震で信号が停電すると交差点で大渋滞が発生し立ち往生してしまう場合があるのです。北海道南西沖地震で奥尻島に津波が襲った際にこれが起こり、立ち往生した自動車に津波が襲い多数の犠牲者が出ました。
 次に、津波は早いときは5分で襲来します。そのため地震発生後は避難勧告を待つ余裕はありません。大地震が起これば即座に避難することが大事です。目安となる震度6とは「立っていられないほどの地震」です。
 徒歩で5分という時間では、市街地から高台まで逃げることは容易でないでしょう。そこで避難先として考えられるのが「鉄筋コンクリート3階建て以上の建物」です。鉄筋コンクリート造の建築物は木造家屋と比べて流失しにくく、かつ3階以上あると水につかりきってしまう可能性も下がります。
 こうした条件を満たし、多くの地域に見られる建物が「小学校または中学校」です。地震や大規模火災の際に避難場所として指定されることが多いですが、津波に対しても合理的であることがわかります。

 以上の補足はいずれも出典の書籍に書かれています。知識を咀嚼して長く記憶にとどめるためにも、原著の全文を読まれることをお勧めします。

アイケングリーン=サックス論文の最大の意義

 前エントリで紹介した「Eichengreen、Sachsの論文をみんなで訳す」プロジェクトの助けになるのではないかと思い、岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』に収録されている野口旭先生と若田部正澄先生の論文「国際金本位制の足かせ」から当該論文を解説している箇所を紹介します。長文転載になりますが、アイケングリーン=サックス論文の理解を助けることにもなりますので、広い意味での引用と寛容に捉えていただければ幸いです。
 なお、アイケングリーンは現在の「通貨切下げ競争」に対しても論説(How to Prevent a Currency War [2010-10-12]道草による翻訳)を出しています。あわせてお読みいただけると、今まさに進行しているFRBによる積極的な緩和政策と日銀・日本政府の対応の対比とその意味するもの(例えばデフレやドル安円高にどのような影響を及ぼすか)が見えてくるかと思います。


【書籍】野口旭・若田部正澄「昭和恐慌の研究-国際金本位制の足かせ」(P25-27)

2.3 国際学派の端緒:大恐慌の国際的次元
 国際学派の端緒は、バリー・アイケングリーンとジェフリー・サックスによる一本の論文(Eichengreen and Sachs [1985])によって切り拓かれた。それは、その論文の掲載誌が示しているように、経済史の分野の研究であり、経済理論的な推論に基づく歴史分析というべこ研究であった。この論文の直接的な主題は、上で言及した近隣窮乏化政策論の再評価である。すなわち、彼らはそこで、恐慌の世界的拡大をもたらしたのは各国の為替切下げ競争であったとする通説を否定し、むしろそれが各国の恐慌からの回復の契機となっていたことを示したのである。
 彼らは、その推論の背後にある理論モデルを、Eichengreen and Sachs [1986]において提示している。しかし、その基本的な論理は、通常の教科書的な開放マクロ・モデルによっても容易に示すことができる。
 2つの国からなるマンデル=フレミング・モデル(MFモデル)を考えよう。そしてそこで、両国が交互に名目為替レートを切り下げあうような政策を行ったときに何が生じるかを考えよう。従来の通年とは、このような「為替切り下げ競争」は、限られた需要を相手国から奪い取ろうとする近隣窮乏化政策にほかならず、結局は両方の国が損失を被るというものであった。しかし、MFモデルに基づいた場合、そのような推論は明らかに誤りであることがわかる。
 2国MFモデルにおいては、名目為替レートは、両国の相対的貨幣供給に依存して決まる。したがって、相手国の貨幣供給が一定の場合、自国通貨の名目為替レートを切り下げるということは、自国の貨幣供給を増加させることと同義になる。換言すれば、一つのマクロ的均衡で成立していた名目為替レートを変更するためには、少なくとも体系内の変数の1つを、新たな名目為替レートと整合するように動かさなければならない。その動かすべき変数とは、言うまでもなく国内貨幣供給である。
 したがって、「貨幣切下げ競争」とは、事実上は「金融緩和競争」を意味することになる。そして、両国が交互に金融緩和を実行する限り、かりに自国為替レートの下落から得られるはずの外需の増加効果が相手国の「報復的為替切下げ」によって打ち消されたとしても、自国の金融緩和を通じた内需増加の効果と、外国の金融緩和を通じた外需増加の効果は、まったく失われることはない。要するに、「為替切下げ競争」は、マイナス・サムやゼロ・サムのゲームではなく、プラス・サムのゲームなのである。
 問題はむしろ、各国が自国通貨の対外価値=名目為替レートを特定の水準に維持しようと固執したときに生じる。例えば、この2国MFモデルにおいて、片方の国が一方的に金融引締めを行ったとしよう。その場合、当然ながら、名目為替レートはその国にとって上昇する。しかしその時、もう一方の国が自国通貨の下落を嫌い、名目為替レートを元の水準に回復させようと考えたとしよう。それが何によって可能になるのかといえば、それは、その国が相手国と同程度の金融引締めを行うことによってである。つまりここでは、上の相互的金融緩和のケースとまったく逆に、名目為替レート維持のための各国の政策努力が、結果として相互的な金融収縮をもたらせてしまうのである。
 以上の結論は、名目為替レートの維持を目標とする政策レジーム=固定相場制においては金融政策の自律性が存在しないが、名目為替レートの変動を許容する政策レジーム=変動相場制では自律的な金融政策が可能になるという、よく知られた経済学的命題の一応用例にすぎない。重要なのは、恐慌の世界的伝播と、各国のそれからの脱出という過程も、まさにこの2つのレジームが必然的に生みだす経済的帰結そのものとして理解できるという点である。すなわち、恐慌の伝播は、名目為替レートの維持を目標とする政策レジームの持つ本質的属性であった。そして、そこからの離脱は、各国は名目為替レートの下落を許容するレジームに移行することによってのみ可能となった。アイケングリーン=サックス論文の最大の意義とは、それを示唆することで、研究史の上に、大恐慌理解のための新しい視覚をもたらせたという点にある。



「Eichengreen、Sachsの論文をみんなで訳す」プロジェクト

 Twitterのリフレ政策支持者を中心に「Eichengreen、Sachsの論文をみんなで訳す」という翻訳プロジェクトが動いています。私も末席に加わらせてもらっていますが、その経緯などをまとめておこうと思います。

 ご存じの方が多いと思いますが、現在、民主党内のデフレ脱却議員連盟は日銀法の改正案を国会で提出すべく党内の調整を行っています。


【ブログ】民主党参議院議員金子洋一氏「日銀法改正を民主党が正式に検討開始!」(H22.11.6)

 これまでも申し上げてきましたように、日銀法改正が民主党内の正式な審査手続きに入っております。

 民主党政策調査会財務金融部門会議(古本伸一郎座長)は、先月28日に、われわれデフレ脱却議員連盟からの要請により、日銀法改正を検討課題として取り上げることを決定しました。

 具体的には、政策調査会財金部門会議で、何回か有識者を招いて勉強会を開く、また、部門会議の下にワーキングチームを置き、そこで日銀法改正法案案文など詳細にわたって検討するなどの方針となります。



 これと恐らく関連しているのでしょう、Twitterにおいて金子議員がこんなつぶやきをされました。


【Twitter】金子洋一(@Y_Kaneko) 2010-11-04 13:16:24

今、イェール大学の浜田宏一先生が、上念司さん @smith796000 とともに国会事務所に来訪中です。 http://plixi.com/p/54843668


 つまり、民主党の政策調査会財金部門会議の勉強会に浜田宏一先生が有識者として招かれているのでしょう。上念司氏もまた有識者の一人あるいはコーディネーターとして関与していると思われます。上念氏はデフレ脱却国民会議の事務局長であり、浜田宏一先生は同会議の呼びかけ人の一人です。また同会議は金子議員が事務局長を務める議連と共同歩調をとってきていますので、このお三方の組み合わせには違和感がありません。

 そうした中、上念氏から、道草や明暗といったリフレ派支援サイトを開設しているnight_in_tunisia氏に対し、文書の翻訳の依頼がTwitter上でなされました。


【Twitter】上念司(@smith796000) 2010-11-04 22:06:27

@night_in_tunisi 先ほど浜田宏一先生から宿題が出ました。明暗の方でどなたかご対応いただける方はいらっしゃいますでしょうか?→ http://ow.ly/34jU3


【Twitter】上念司(@smith796000) 2010-11-04 22:36:49

はい。是非お願いします。浜田先生が翻訳文を議員さんに配りたいそうです。 RT @night_in_tunisi: @smith796000 appendix除くとタイプライターで22ページですね。声をかけてみましょうか?全文翻訳しちゃって良いのですか?


 対象となっているアイケングリーンとサックスの論文は、金融緩和による通貨の切り下げは他国の経済に悪影響を及ぼさないことを示したものです。先般のG20では為替介入などの通貨切り下げ政策に牽制がかかりましたが、この論文は金融緩和に伴う通貨切り下げはこれにあたらないということを証明した研究です。

 野田財務大臣はG20以降も為替介入は必要に応じて行うとのコメントを出していますが、外国債を買わなくても通貨の切り下げ圧力を生じさせることができる金融緩和の方が現状においては採用しやすい政策です。これを議員に説明する資料として前述の論文の翻訳を配布しようということのようです。

 さて、上念氏の発信をうけてから、あれよあれよという間に、有志による翻訳プロジェクトが始動しました。Twitter上での動きはTogetter『浜田宏一先生の宿題「アイケングリーンの論文を議員に配るので翻訳して」⇒道草始動』に記録していますが、プロジェクトの拠点サイトとして「Eichengreen、Sachsの論文をみんなで訳すWiki」が開設されました。(ito_haruさんの尽力の賜物です!)

 現在、翻訳作業が進行しています。論文の内容あるいはこうした活動が始動しているということに興味のある方は、是非Wikiを覗いてみてください。最後に、このプロジェクトが動きつつあるなか、masumasu_oさんがつぶやいた言葉を。

「オープンソース経済学のはじまりの鐘が高らかと鳴り響いた... 」

国民新党/亀井静香党首講演への論考

 先日のエントリ「亀井静香氏の経済財政政策(講演録)」ですが、読めばわかる内容をあえて要点にまとめます。

【亀井静香氏の講演(経済政策関連まとめ)】

(1)小泉改革を支持した経営者が下請け・孫請けを切り捨て、人件費の削減を進め、失業者を増加させた。
(2)工場の海外流出を食い止め、雇用を取り戻すためには内需の拡大すなわちデフレギャップを解消が必要。
(3)内需拡大には公共事業が必要だが、そのための資金は国債の発行で賄えばよい。
(4)日本の官庁は財務省が支配的。メディアで経済評論家が国債破綻論が目立つのも財務省が言わせている。
(5)破綻したギリシャ国債と異なり、日本国債の保有者の大半は日本人であり、破綻の恐れはない。
(6)財政赤字を支出の削減で解消するのは無理。景気回復による税収増加が唯一の道。
(7)政治としては、いかに財務省の影響を排除して、内需を拡大する政策を断行するかが鍵。


 さて論考ですが、バイアスがかかっていると感じるところが1箇所、政策の視点がこの講演では欠けていると思われる点が1箇所ありますが、それ以外については納得できると思っています。順を追って見ていきましょう。

 まず(1)ですが、バイアスがかかっているのはここですね。まあ小泉氏は亀井氏のまさに政敵ですので、やむなしでしょうか(汗)。小泉改革の問題は需要不足による不況の局面において、潜在成長率を高める政策を中心に据えてしまったこと。政策と局面のミスマッチです。講演録にある「みなで助け合おうという心を亡くして国が持つはずがない」といった道徳の問題ではありません。

 続いて(2)ですが、これは概ねよいでしょう。デフレギャップは外需の拡大でも解消に向かいますが、現在の不況への影響とこれからとりうる政策に実効性との両面において、内需がより着眼すべき問題かと思います。

 欠けている点があるのは(3)です。内需拡大に有効な政策を一般化すれば金融政策と財政政策です。財政政策の中の一部である公共事業に限定はされないでしょう。公共事業は一次的にはGDPに直結するうえ波及効果も期待でき、社会インフラの充実を兼ねますので政府が行う伝統的な景気刺激策といえます。その他の財政政策には減税や給付金がありますが、これらの手法は資金がどこに投下されるかを市場に委ねるという意味で効率的です。バラマキという言われ方をすることもありますが、むしろ効率性・公平性という点では特定分野への補助金からなる産業政策に勝ります。
 そして財政政策とは両輪をなす金融政策への言及がありません。過去20年に及ぶデフレへの対策においてより不足していたのは金融政策です。現在の深刻なデフレのもとでの代表的な政策は、市場のインフレ期待醸成に向けたインフレ目標の設定や実質金利の低下を目的とした量的緩和の実施があげられるでしょう。なお、講演録には出てきませんが、亀井氏は金融政策のみでデフレギャップを解消するのは無理というスタンスです(関連記事:デフレギャップ解消に金融政策のみでは限度=亀井担当相/ロイター)。

 (4)についての真偽を証する材料はもちあわせていません。しかし民主党政権になってからの財務大臣やその他の議員の発言などを見ているとさもありなんという感じはします。民主党が野党であった2009年衆院選では消費税は5%維持とあったのに、政権党になって1年経たない2010年参院選ではしっかり10%まで増税という名言がされました。増税は一般的に選挙には不利となりますが選挙直前になて党内に「国家財政を考える会」なる議員連盟を発足して消費税増税を訴える動きなどもあわせてみると、短期間に「増税をしないと財政が破綻する」という考えを強力に注入した主体の存在が想像されます。そうしたところで連立政権の一員である亀井議員の発言ですので重みを感じます。

 そして続く(5)を見るとギリシャショックの直後にメディア上で国債破綻の危険性を訴える経済評論家が増えたのを思い出します。同時に消費税を15%まであげる必要があるという論説も数多く見えましたが、参院選で消費税増税を掲げた民主党が敗北した後はめっきりみなくなりました。あわせて国債破綻論の露出も減ったような気がします。亀井議員は日本国債はギリシャ国債よりもはるかに安全だと述べていますが、これはその通りでしょう。ただ、その根拠として国債の保有者の違いをあげていますが、この他にも負債残高に相応の資産を有しているか、国の信用力など、いろいろな視点があるようです。企業が借入れをするときの与信の考え方と似ていますね。

 (6)はある意味、当たり前の話です。国の費用は巨大な固定費ですので、税収が上がれば赤字は縮小し、税収が下がれば赤字は拡大します。今は下がっているから財政危機と言われるわけですが、それは不況で税収が下がっているからです。そもそも税金は免税点や累進課税が設定されていることが多いので、不況になれば税収は一気に下がります。それを増税でカバーするのは無理で、景気回復による税収増加を期待する他ありません。当面の目標は名目GDP成長率が国債金利を上回ることでしょう。これが果たせれば債務は徐々にでも減少します。

 最後の(7)は政治の話ですが、(4)が事実なら(7)も適切ということでしょうか。こちらも現連立内閣の一員であり、過去には自民党小渕・森総裁時代に政調会長を務めた亀井氏の言葉と思うと含蓄が。

 以上のまとめを踏まえて個人的な感想を。「反小泉"郵政"改革」バイアスを脇におけば、公共事業を重視した素朴なデフレ脱却推進者という印象。連立政権内では国債破綻論に耳を貸さず財務省との対決姿勢を明確にしているという点ではポジションを得ているなという印象です。財務省の行動に対しての言及があったのが、本講演の中では眼目ではないでしょうか。民主党デフレ脱却議連やみんなの党の動きに対して、どのような反応をするのかは今後の注目。


[おまけ] 各話題に関連してオススメの記事・ブログ
大切なのは「結果の平等」。だって人生は不平等だから。/飯田泰之インタビュー
田中秀臣「リフレ派経済学MAP」
・勝間和代×高橋洋一「ギリシャ危機、次は日本が危ないは本当か」他 vol.1/vol.2/vol.3
リフレ派を批判した山崎元氏のその後/山崎元 ※注:コメント欄が眼目

亀井静香氏の経済財政政策(講演録)

 亀井静香氏の講演を聴く機会を得ました。約1時間の話の中で、(1)連立政権、(2)経済財政政策、(3)その他(検察不祥事・外交)、といった話をされていました。ここでは私が関心を持っている(2)についてまとめておきます。要約ですので、言葉遣いやニュアンスが違うところもあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。

 なお、私は亀井氏の支持者ではありません。亀井氏の過去の行動・発言に対する率直な印象は、理解できるところもあるが本音がどこにあるのかわからず信用しきれないというところです。とはいえ「理解できるところ」の中には一聴に値することもあります。参考までに講演録の中で私が関心をもった箇所に下線を引いておきます。それ以上の評は行いませんので、あとはそれぞれ皆さんが評していただければと思います。


【亀井静香氏の講演(抜粋・要約)】

 デフレギャップが大きな問題となっている。このままだと本社だけは日本でも生産拠点は海外となり、たちゆかなくなる。本社に利益が入るから良いという人もいるが、生産拠点がなくて雇用が保てるはずがない。デフレにどう歯止めをかけるか、内需をどう回復させるのか、経済財政政策を断行しなければならない。

 小泉純一郎がアメリカのやり方を日本に徹底的に入れた。日本の古き良き社会はあっという間になくなってしまった。自民党総裁選で争った頃から新自由主義はダメだと訴えてきたが聞く耳を持ってもらえなかった。経営者の多くも小泉改革に汚染された。

 かつての大企業は中小下請との共存を考えていたが、現在は費用削減ばかりで、下請けは仕事をもらっても利益が出ないという形になった。経団連の御手洗氏には苦しいときこそ内部留保を下請け・孫請け企業に還元しないといけないと訴えてきた。しかし、あげくに工場を海外に流出させている。工場の流出により国内の需要と雇用が損なわれているのに、このことをメディアは批判しない。

 若者の雇用が損なわれているのも大きな問題だ。特殊な職種はともかく本来、正社員でまかなうべき仕事まで非正規社員を当てている。若者はいきなり起業できるものではない。大学を卒業したら社会で一歩一歩階段を上って上っていかないといけないのに、正社員の仕事がないというのが現状だ。

 そうした考えのもと、郵政会社の非正社員の正社員化を主張した。郵政会社は社員の半分が非正社員である。これでは特定郵便局長だけが儲かる。役員は、人件費を削減することなく経営改善はできないという考えだったが、それは違う。だから私の責任で交代させた。ところがこうした考えは経営者だけでなく国民にも浸透してきている。正規職員化についてアンケートをとったら85%が反対で驚いた。

 みなで助け合おうという心を亡くして国が持つはずがない。小泉改革は国民そのものを変えてしまった。これを突破するには政府が経済政策を断行するしかない。

 しかしながら、日本は財務省に支配されている。財務省は浅薄な机上の空論を話す経済評論家を前面に立てて自説を流している。他の省庁は植民地と同じ。金を握られたうえ、政策も握られている。メディアの論説委員は大本営発表しかやらない。各社の論説委員を呼びだし、論説の通りの政策を行ったらどうなるかと詰めたが、誰も答えなかった。財務省は会社でいう経理のようなものだが、これが事業部を支配している。私がかつて予算編成を行ったときも経理の役人がやってきたが、何人も出入り禁止にした。今は大和総研理事長の武藤氏も出入り禁止にした1

 財務省は財政を再建するためには予算を削ればいいなんて、誰でも思いつきそうなことを言っているが、そういうものではない。橋下元首相は財務省の言うとおりにやったところ、経済がどうしようもないところまで落ちた。その後、小渕元首相が財政を拡大したら回復してきた。 ところが小泉改革でおかしくなった。GDPを540兆円から480兆円まで1割縮めたのが改革か。あのときこのまま国債残高が増えたら破綻するといって改革を行ったが、その後、国債は530兆円から1000兆円まで増えたが、全く破綻していない。

 経済の立て直しのない財政改善などない。今回、補正予算で4.8兆円の経済対策を組んだが、このときの言い分が「税収が上がってきたので、1兆円から4.8兆円まで増やした」というものだったが、これはおかしい。補正予算は当初予算とは違い、緊急性が高いからこそ行わなければならないものだ。経済対策を行わなければならない状況だからやるというのに、税収が増えたからとは全く逆の発想だ。

 デフレ脱却のためにやるべきをやる、財源がなければつくるものだ。しかるにエコノミストと財務省が国債が破綻するといった変な論説を流している。日本の国債は国内から借りている。だから残高が増えても金利はあがっていない。むしろ銀行は金利で商売にならないので手数料で商売をしている状況だ。日本はギリシャとは違う。

 今なら国民が金を出せるので、これを出してもらえば良い。これを税金で出してもらうのは経済にとって良くない。しかし政府がこれを借りて政策を行うのはなんらおかしくない2。今の閣僚で私と同じことを考えているのは海江田氏である。しかし、残念なことに彼のポスト(経済産業大臣)にはそれを進める力はない。

 メディアはすぐに赤字国債を叩く。赤字国債のイメージが悪いなら、みどりの国債や福祉の国債を発行すればよいのだ。それなら国民も納得するだろう3。日本は外国から金を借りていない。一方、アメリカは日本から200兆円借りているし、中国からも借りている。日本は国民から借りて、内需を拡大すべきである。

 ODAなど海外で事業をやっているが、それよりも国内で行い内需を拡大すべきだ。立体交差化や電柱の地中化などを日本中でやればよい。これらは無駄にならない。国民の生活を良くする事業をやる。ゼネコンが受注するだけではない。地方の中小企業にもまわる。福祉経済に金を入れるのも悪くないが、これは漢方のようなもので時間がかかる。為替介入も一回や二回やっただけではだめ。それよりも内需拡大をすべきだ。

 財務省がしっかりしていればこんなことを私が言わなくてもよいが、残念ながらそうではない。だから政府が断行しないといけない。財務省の言うことを聞いていれば、どんどん落ちていくだけである。



1武藤敏郎氏。元財務事務次官、元日本銀行副総裁。出入り禁止の逸話は、亀井氏が内閣府特命担当大臣(金融担当)の頃の記者会見でもでていた。
2国債を増額することを意味している。国債を追加発行すれば、国民が金融機関に預けている預金が国債に流れるため、国民は間接的に国債を支えることになる。
3亀井氏は従前から環境や福祉を目的にした環境国債や福祉国債の発行を主張している。目的を明確にした国債としては、財政法4条に基づく建設国債があり、これに準ずるものと思われる。

【翻訳】ポール・クルーグマン「世界で最悪のエコノミスト」

 ポール・クルーグマンが「The Worst Economist in the World」というエントリをあげてます。独特の「クルーグマン節」ともいえる皮肉の効いた文書を書く人なので、タイトルを見て中身が気になりました。いつもはクルーグマンなど著名な経済学者のエントリを有志が翻訳しているサイト「道草」にて訳文を読むばかりですが、今回は自身の英語学習も兼ねて自力で読むことを試みました。

追記:道草で活躍のerickqchanさんにコメントで頂いた指摘を修正反映させました。(赤字)


【ブログ】ポール・クルーグマン「世界最悪のエコノミスト」

 思いつき:キース・オルバーマンの「世界最悪の人物」賞1の経済学版ができるんじゃないかと思ったんだ。もちろん彼が実際に番組で取り上げてきた人物はみんな世界最悪を意味しているわけじゃない。とりわけひどい行動か発言にそういう名前の賞をつけているだけのことだ。

 僕はまた別の連中にこのゲームに参加することを勧めるよ。そうとも、いろんな雇われ荒らし2やらなんやらが、できるなら僕に日に5回はこの賞を与えるってことはわかってるよ。ところで、ここに僕の目についたものがある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説リアルタイム・エコノミクス3が通貨切り下げ競争のリスクについて解説している(いや、むしろ「解説」と書くべきかな)。

   ある国が通貨を切り下げれば、他の国もそれにならう。
   その結果、どの国も貿易での利得を得ることはない。
   一方、通貨の切り下げは原油などの物価への上昇圧力となる。
   物価が上昇したときには世界のGDPが毀損されうるのだ。
   その兆しとして、原油価格が8月27日以降で8.7%上昇している。


 まったく。

 ドルが下落するときにコモディティのドル建て価格が上昇する傾向があるのはなぜだろう?他の国でもコモディティは買われている。だからドル建てのコモディティの価格が一定ということは、他国の通貨で換算すれば下落していることを意味する。第一近似だと、実際のところ、他の条件が一緒なら、世界の通貨のGDP加重バスケットで換算したコモディティ価格は一定のままと見ていい。

 確かに、ドル安になればドルで見た原油価格は上がる傾向にある。でもそれは同時にユーロで見た原油価格は下がるにことにもなるんだ。ユーロ安になればユーロで見た原油価格は上がり、ドルで見た価格は上がる下がる[おっとしまった!]。コモディティ価格がすべての通貨に対して上昇するような切り下げってどんなことだろう?僕にはさっぱりわからないけど。

 思うに、通貨の切り下げを、他の外部の普遍的な何かと比べた通貨の価値を毀損することと捉える傾向があるようだ。そして、そしてみんなそろって貧乏になるってね。でも現実は僕の損すりゃ君は得するもんさ。逆もまたしかり。僕らはみんなそろって同時に切り下げることはできないんだ。

 でも通貨切り下げ競争がダメだってのはよく知られていることからすると、批判的思考法もどっかにいってしまう傾向にあるようだね。



1 アメリカのキャスターであるキース・オルバーマンの番組「Countdown with Keith Olbermann」のコーナーのひとつ。
2 trollはネットスラングで、「荒らし」や「厨」のようなニュアンスのようです。
3 同コラムは「米経済、連邦準備理事会(FRB)の金融政策、経済理論などに関する独自取材ニュースや分析、論評をリポートする」。(「 」内はウォール・ストリート・ジャーナル紙の日本版での説明を引用)

小野善康先生FAQ(初級)

 偶然の機会を得て小野善康先生の講演を聞きました。「増税して景気回復なんてありえん」と確固とした先入観をもって臨みましたが、直接、話を聞くと「これはこれで筋は通っているのか」と思ってしまうので、講演は怖いです(汗)。でも新聞等で主張を目にしていたものの、著書は一冊も読めていなかったので、丁度良い機会でした(笑)。
 講演は経済クラスタを対象としたものではありませんでしたので、平易な言葉を使って説明されており、私としては助かりました。テクニカルタームは「合成の誤謬」くらいだったような。
 さて、小野先生、ご本人によると自分の話を聴いてもらいたくて仕方がないらしいですが、内閣府参与に就任以来、たくさんの人に聴いてもらえるようになった代わりに、批判の機会も増えたそうです。「テレビで2分出るだけでは真意は伝わらない。この前もネットでは叩かれた。」とのこと。
 おそらくあまりに同じ批判を受けるからでしょう、なんと講演レジメにFAQらしきものがありました。小野先生の考え方を示すには良い資料なので引用します。

【講演レジメより抜粋】主な論点
1)増税で国民は金を政府に取られ、消費が冷え込む。
 誤解。増税分の再分配だけ。

2)短期では良いが、長期では生産性低下で経済は回復しない。
 <1>短期が20年以上続き、まだ続く。ほぼ全就業期間
 <2>失業放置と何かで働かせる。どちらが長期によいか。

3)政府は使い道を間違える。成長分野も分からない。
 <1>政府は成長産業を知らないのは当然。国民が提案すべき
   成熟社会派そもそも成長産業などない。
 <2>何もしなければ失業放置→最大の無駄。

4)生産性を上げないと国際競争に負ける。
 <1>供給力競争から需要力競争へ。円安を呼んで企業も発展
 <2>外国需要の喚起→円高。国内需要も拡大すべき。

5)デフレ脱却は金融政策で。
 90年前後で構造変化:供給不足から需要不足、次図参照



※図はレジメのものを参考に本エントリ筆者が作成したもの。オリジナルは散布図。

 このまとめ、今回、聴きたいと思っていたことが見事に集約されています。上記を念頭におきつつ、講演から補足します。ただし、私の解釈間違いもあるかもしれませんので、その点はご留意ください。
 まず最初のポイントとなるのは、「失業こそが最大の無駄」ということです。

【講演レジメより抜粋】経済政策の目的
国民生活の質の最大化、そのための(労働)資源活用
 効率:民間活動>政府活動>失業=最大の無駄
 需要不足では民間活動増えず


 これには2つの意味があるのかなと思われます。一つ目は失業は不安心理を生み、人々の貨幣への選好を高め、デフレにつながります。この点について、需要力不足の成熟社会において効率性を追求するということは、その行為そのものが失業者を生み、デフレを促進するものであるということで、これを政策として行おうという構造改革を強く批判していました。
 もう一つは失業者は労働力として何も生産しないということ。上述の不等式は、人が何らかの活動に従事したときの生産性の比較と見れます。政府活動への従事は、民間活動の従事ほどには生産しないが、失業して何もしないよりは良いということなのでしょう。
 この2つの側面をあわせると、小野先生の主張としてよく聴く話になります。

 A 失業による不安はデフレを促進するので、失業手当を与えて不安を解消すればデフレは止まる。
 B 失業手当の経済効果は、失業者を雇って穴を掘って埋める公共事業に等しい。
 C 普通の公共事業は穴を掘って埋める事業=失業手当より効率性は高い。
 D よって失業者を雇用して政府活動に従事されればデフレは止まるし、政府活動による便益も得られる。

 ここでは財源にはあえて触れていませんが、財源が確保できるならば「失業者を雇用する」というのは極めてストレートな手法だと理解できます。問題は財源と効果です。財源を税に求めるならば、投下した税よりも経済波及効果が大きくなければ効果が持続しません。これは一般的な公共事業では乗数効果がいくつかのかという問題なのですが、小野先生は乗数効果を否定していることで知られています。今回の講演では乗数効果という言葉を使わずにこのあたりの話がありました。
 
【講演レジメより抜粋】政府事業の負担と便益
負担:『納税者』(国債なら明日の税負担)
便益:
1)設備・サービスの便益、「生活の質の向上」
 『環境の便益を受ける人々、道路や鉄道の利用者、
  介護や保育を受ける人々とその家族、etc.』
2)その仕事に就いて所得を得る。
 『介護士や保育士、建設労働者、環境関連企業』
 所得増=納税者負担増→総消費の刺激と抑制相殺
3)失業低下による景気刺激:「経済の拡大」と「財政改善」
 『経済全体の企業と家計』
 デフレと雇用不安の軽減→総消費刺激
 総消費拡大による企業収益増、雇用増、税収増


 ここで、この政府事業の財源を全額税金に求めるとします。国債を発行してもタイムラグが発生するだけで本質的には同じとみなしています。負担は『納税者』が行います。その事業の結果生まれたサービスの便益は、サービスの利用者が受けます。これ自体は「生活の質の向上」には帰しますが、経済には影響を及ぼしません(道路のようなインフラは別)。次に、職に就くことができた失業者が所得を得ます。その所得をもとに消費をしますので、これは消費の増大につながります。
 ここで普通の公共事業ですと、消費が次の消費を誘発する乗数効果を述べるところですが、2)のところをよく見ると、「所得増=納税者負担増→総消費の刺激と抑制相殺」とあり、さらっと否定しています。つまり納税者が税負担により消費する機会を逸した分と同じ金額を政府の雇用された失業者が消費するので、一緒だということでしょうか。
 しかし、その下の3)に「経済の拡大」という文字が見えます。これは乗数効果ではないのかと思ったら、どうも違うようです。失業による不安が解消され、貨幣への選好が低くなるということのようです。貯蓄率が低くなるということでも良いのかもしれません。3)だけ見ると不思議なことに金融政策の効果にも似てますね。
 前述のように小野先生の考えだと、税負担分は政府事業に伴う所得増と1対1の関係ですので、それ自体は景気に好影響も悪影響も与えない。そして、貨幣選好が弱まり消費が刺激されることで、間接的に経済は回復していくというように理解しました。

 では、ここで冒頭のFAQに戻ります。まず1)ですが、政府事業の財源を消費税に求めればよいという小野先生の発言を受けてのものです。前述のとおり、増税分は政府事業を通じて政府の雇用者に移転するので、景気全体への影響はないということですね。どうも言いくるめられている気がしないでもないですが、「政府事業の姿をした再分配です」と言い切られると、そんな気もしてきます(弱気)。でも国債でいいのではないかとも思いますが、それについては国債を発行しても将来の増税を予想するので、今の増税と大きくは変わらないとのことでした。これはリカードの中立命題のよるものでしょうか。
 次に2)ですが、デフレが長期化しているのは事実で、今のままではさらに長期化するでしょう。他の手だてがないと仮定すれば、民間活動による失業の解消は起こらないので、結果的に政府活動による失業の解消が唯一の手だてとなります。他の手だてがなければですけどね(リフレ汁)。
 さて、ちょっと頭をひねるのが3)です。「政府は成長産業を知らないのは当然」ってどういうこと?改めてここまでの説明を読み返すとわかるのですが、小野先生の考えでは、公共事業の中身については経済の拡大には何の作用もしていません。「経済の拡大には失業さえ解消されれば良い」のです。では、穴を掘ってうめる事業より優れた事業を行う意味は何かというと、どうやら「生活の質の向上」なんですね。何をやっても経済波及効果は同じなので、自分たちの生活の質が高まると思う事業を国民が選択すればよいと。新聞で環境や福祉を成長分野で雇用を図るとあったのは、小野先生の意図とは異なり、新聞が解釈を誤ったか、菅首相が言葉を間違えたかのどちらかのようです(汗)。環境や福祉は小野先生が考える「生活の質の向上」であり、違うものでもよいとのことでした。ただ、民業を圧迫すると別の失業者を生むので、そこを考慮した例ではあったようです。
 続いて4)ですが、中国がいくら成長しても、それを恐れず、むしろ質があがった中国の製品をどんどん買えばよいとのことでしたら。そうしたら経常収支が悪化して、円安になるから良いと。経済学的な発想ですねえ。生産性を高めて海外への輸出を伸ばそうとしても、結局円高を促進して非効率というのはその通りですね。
 最後に5)で、リフレ派が最も感心するところですが、残念ながらさらっとした説明しかありませんでしたが、ようするに効果が低いと。1993年頃からハイパワードマネーを増やしても消費者物価指数が増加しないことを例としてあげてました。さらっとしすぎて反論のしようがありません。
 
 以上、ざっとまとめましたが、最後に感想を述べますと、当初の先入観よりも筋が通っているかなという印象(汗)。1番ピンを失業の解消に置くという考え方はわかりやすい。ただ、これは上記の2)で下線を引いていますが、「他に手だてがなければ」という付帯条件付きです。すなわち金融緩和や金融財政一体化政策が本当に効かないのかどうかは今回の講演ではほとんど言及がなかったので、そこは納得していません。また、財源については国債を発行しても結局、今の増税と一緒だということでしたが、一緒なのであればなおさら増税でなく国債でも問題はないだろうと思いました。

補足:小野先生の考え方については、飯田泰之先生、松尾匡先生もブログでそれぞれ見解を書かれています。これらのエントリをあらかじめ読んでいたことが講演での理解の助けになりました。この場で御礼申し上げます。

 飯田泰之先生「こら!たまには研究しろ!!」 [economics]「小野理論」批判のよくある誤解

 松尾匡先生「松尾匡のページ」エッセー 10年8月20日 小野善康さんからお電話をいただいた件ほか

実質金利をサクッとツイッターで伝える方法

 Twitterで、@uzu_areさんからの表題の問いかけに対し、@errorworldさんと私(@do_moto)が答えたときのやりとりがちょっと面白かったのでTogetterで公開したら、アクセスが1000PVを超えて驚きました。
 実質金利の意味をツイッターで伝えたいというニーズをもっている人が、世の中にどれほどいるのかわかりませんが、「預金金利」と「借入金利」のそれぞれについて実質金利を考える意味をサクッと140字でまとめたという点では、悪くない説明なのかなとも思います。

【Togetter】実質金利をサクッとツイッターで伝える方法

うーん、僕には(名目金利との違いでもって)実質金利をサクッとツイッターで伝えるには、力不足だなあ。。。飯田先生の『経済は損得で理解しろ!』でも6章と後半ですし。【名目では】銀行預金が超低金利であることは確かなんですが、インフレ調整後の【実質では】金利が高止まりしてる。。。うーん。
uzu_are 2010-08-06 15:36:04
(緩募) 実質金利をわかりやすく説明する方法orサイト。 ひとまずは司法書士レベルの方を対象に。理想は「高校生でもわかる」
uzu_are 2010-08-07 00:12:12
実質金利の説明って「おめー100円のパンが110円に値上がりする世界なのに5%の金利で得したって思えるか?100円預けて105円になった時、もうそのパンは買えねえヨ。でも逆に1%の金利でもパンが95円になってんならウハウハじゃろ?」ってのじゃダメ?
errorworld 2010-08-07 01:29:41
(・∀・)! RT @errorworld: 実質金利の説明って「おめー100円のパンが110円に値上がりする世界なのに5%の金利で得したって思えるか?100円預けて105円になった時、もうそのパンは買えねえヨ。でも逆に1%の金利でもパンが95円になってんならウハウハじゃろ?」
uzu_are 2010-08-07 07:18:17
「逆にパン屋が100万円借りてパン釜買ったと思ってみな。100円のパンが110円に値上がりする世界なら年に1万個売れば5%の金利払ってお釣りがあるよな。95円に値下がりする世界じゃ1%の金利すら払えんぞ。お前それでも金利が安いって思う?」 @uzu_are @errorworld
do_moto 010-08-07 08:05:21
(・∀・)!!RT @do_moto: 「逆にパン屋が100万円借りてパン釜買ったと思ってみな。100円のパンが110円に値上がりする世界なら年に1万個売れば5%の金利払ってお釣りがあるよな。95円に値下がりする世界じゃ1%の金利すら払えんぞ。お前それでも金利が安いって思う?」
uzu_are 2010-08-07 09:32:31
@errorworld @do_moto お二方の才能に脱帽(・∀・)
uzu_are 2010-08-07 09:34:58