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heartland

I just write my heart.

Lovely 第23話 all

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私と恋愛するつもりはないのに、私の感情を害するかどうかを気にするなんて変な人。おかまいなく、といつも調子で肩をそびやかして答えても今度はどうしても信じようとしない。
「私はただ、あなたと一緒にいたいだけよ」
心に任せて生きるのを信条にしているの。
「それって君は僕を愛しているように聞こえるよ」
「そうかしら」
気のせいよ、と付け足してから彼の瞳をじっと覗き込んだ。彼の瞳は私の視線から遠いところにある。彼は少し俯いて自分の手の中の私の両手を見つめている。彼は私の両手が好きだ。
「私はあなたの気持ちに甘えているだけ」
彼は私のことを好きでいてくれる。私のどこが好きかと聞いたら彼は私の手が好きだと答えた。次の日は私の話す言葉が好きだと言った。私のよろめきやすい感情を彼は支えようとも言ってくれた。
「私があなたと一緒にいたいだけよ。あなた自身の気持ちと私の要求を混同しないで。私の我儘が受け入れられないなら拒絶すればいいのよ」
彼は私のことを好きでいてくれる。でも、彼は私の手を言葉を感情を愛しているだけで、総体としての私を知らない。彼は私の両手を自分の手の中に取って、自分の指で私の手の甲をじっと撫ぜている。私は彼のされるがままになっている。彼は私の手を言葉を感情を愛しているけれど、私の心を知らないし私の心を愛そうとしない。
「私のことを愛していないと言うのなら、これ以上かかずらわないで」
そうしないのなら、私を愛して。
「私があなたと一緒にいたいだけなのよ」

Lovely 第22話 wait

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背の高い彼からのキスは空から落ちてくる雨のようだ。私はただ、薄く唇を開けて待っているだけでいい。雨粒が自ら触れぬところまで手を伸ばして何もかも湿らせてしまうように、彼のキスは私の目蓋から涙を呼び出して最後に私の頬は自分の涙でしとどに濡れてしまう。
「泣かないと約束して」
私があんまり泣くから、今日彼はこう言い出した。
「僕のキスが悲しくなるなら、もうキスしないよ」
「いや」
「キスしてほしいの」
「してほしいわ」
「それなら泣かないで。僕は笑った顔の方が好きだよ」
仮面のように笑顔をかぶれないのよ。笑った顔の私の頬は乾いているだけできっと冷たいはずだわ。
「泣かなければ愛してくれるの。笑っていればキスしてくれるの。私が一人きりではなきも笑いもできないことぐらい知っているでしょう」
ああ、また涙が落ちそう。
「私は待っているだけなのよ。泣いているのは待ちすぎたからよ」

Lovely 第21話 pain

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鋭い痛みが胸に走る。彼のことを考えるだけで。彼の逡巡した眼差しを、彼の無骨な手を、彼の薄い唇を思い出すだけで私の胸は萎縮する。恋の甘やかな痛みとは違う。一瞬鋭い針を脇から心臓に差し込まれたようだ。一瞬ですべての思考が停まり、時間の流れにまた乗るにはしばらくの時間が必要だ。
「私のことを愛しているとは一言だって言ってくれないのにね」
彼は私を好きだと言って私を抱くけれど、愛しているとは決して言わない。
「私も彼のことを愛していないのにね」
私も彼のことが好きだと言って彼に抱かれているけれど、彼のことを愛してはいない。
「彼は私のことを愛してくれるのかしら」
私は彼の愛を求めてもいいのかしら。
「彼は私が別の人間からの愛を受け入れていることを知っている」
だから、『愛している』と言わないのだろうか。その人間からの愛が私の碇にならないことを知っていて、私がいつまでも波間に漂う流木のように自分をすり減らしながら浜辺の砂を求めて彷徨っているのを知っていて、自分の愛も結局は無益だと考えているのだろうか。
「私は彼の気持ちを裏切っているのかしら」
私は何もかも選べるほど関係に専制的ではない。私は何も選ばない。波を見て波に身を任せているだけだ。ただ、そう漂うだけの人生にも時折嵐がやってきて私の体を岩に叩きつける瞬間がある。
「この痛みは私に思いとどまるように告げているのかしら」
それとも自分自身が崩壊していく痛みなのだろうか。

Lovely 第20話 same

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誰かのことが好きなのか嫌いなのかははっきりわかるけれど、愛している人は誰かと聞かれると答えられない。大好きな人は何人かすぐに挙げられるけれど、そのうちの誰かのことを愛しているかと聞かれると途端に言葉を失ってしまう。
「今の恋人のことを愛しているんでしょう」
だから、彼からこう聞かれたときは困ってしまった。私は今、二人の男の人と付き合っている。一人との付き合いはだいぶ長くて友人たちは私たちがそろそろ結婚するものと考えているらしい。彼からのプロポーズはまだないけど、何となく彼がその心積もりでいることは簡単にわかる。もう一人との付き合いはここ二ヶ月ぐらい。今、私に聞いたのは彼だ。
「彼のことを愛しているのに、僕のことを拒絶しないのはどうして」
彼は本当に理屈っぽい。何でも理詰めで説明しないと納得しない人だ。
「困るわ。どう答えても喧嘩になりそう」
「どうして」
「どうしてって、あなたがそういう人だからよ」
私とはきっと愛しているという気持ちの考え方が違うのよ。私は二人とも大好きだけど、愛しているのはどちらか、どちらをより愛しているのか、聞かれても返答に窮するだけだ。目の前の彼は私のことを愛していると言うけれど、愛の概念が今ひとつつかめていない私には言葉ばかりが嬉しいだけだ。
「今の恋人のことは好きよ。あなたも好きよ」
そうだ、そうとしか言いようがない。
「気持ちに優劣はないわ。多寡もないわ。私の心はひとつきりだし、何でも言葉で片付けられるほどはっきりした気持ちは私にないの。私は好きな人と一緒にいたいわ。だからあなたのことも拒絶しない。そう、今の恋人のことも拒絶しない」
「僕は君のことを」
「続きはやめておいて。私にはあなたの心もわからないのよ…。愛していると言ってくれても私にはあなたの愛の形がわからない」
私は右手を伸ばして彼の左胸に触れた。シャツの下の固い筋肉、張り詰めた心臓の鼓動、心にこうして触れられたらどれほどいいだろう。私は左手で自分の胸を押さえた。乳房の下の静かな鼓動が切れ切れに私の手のひらに伝わってきた。心臓の鼓動も私とこれほど違うのに、どうして同じ人間同士だからと同じ感情を求め合うのか。
「私はあなたのことが好きよ。近くにいられるだけでしあわせだわ」

Lovely 第19話 scent

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裸で彼と抱き合うと彼の胸の刺青が目に入る。指でなぞるとくすぐったがる。舌でそれを舐めると溜息を漏らす。彼の肌はいつも私の肌より少し熱くて、熟れた葡萄の香りがする。