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heartland

I just write as my heart says.

Posts tagged with "Lovely"

Lovely 第48話 chicky

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君は僕の可愛い小鳥。大きくなっても可愛い小鳥。羽ばたいても羽が散るだけ飛び立てず、それでも僕から逃れようと首を動かす。あまり鳴くならその嘴も塞いでしまうよ。あまり泣くならその目も塞いでしまうよ。僕の腕の中においで、じっとしていれば何も怖いことはない。まだ君は一人で遠くに行くには幼すぎる。おいで、聞き分けのない馬鹿な小鳥。そんなに羽を散らかしてどうするつもり?

Lovely 第47話 fire

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いくら考えても答えの出ない堂々巡りに疲れ果てて冷たいベッドの中でとろとろまどろんでいると、トントンとかすかな音が聞こえた。窓の外の木の枝が落ちた音だろうと寝返りを打って夢に戻ろうとする。しかし音は繰り返される。
「誰」
「まだ起きている?」
きいっと蝶番のいびつな音がしてドアが開いた。彼だ。反射で身を起こし、ドアに駆け寄る。時計を確かめるともう1時近い。
「どうしたの」
「今夜は冷えるから平気かなと思って」
確かに電気毛布を入れていても布団が少しも温かくならない。私は自分の足元を指差した。靴下を履いて寝ているの、おばあちゃんみたいでしょ。
「予備のブランケットがあるから出してあげるよ」
彼はそう言うとクローゼットを開けて私の届かない上の棚から畳んであった黒い大きなブランケットをゆっくり下ろした。私はそれを受け取って自分のベッドに広げる。
「ありがとう。これできっと大丈夫」
彼の大きな手がゆっくり伸びてきて私を捉えた。夜気に冷え切った私の額に彼の熱した唇が押し当てられる。
「本当に大丈夫?」
ここで何て言えばいいの。私は右足の靴下の先を左足の指で引っ張りながら彼の腕の中で逡巡する。私の両手は彼の腕の下にあって少しも動かせない。
「きっと大丈夫よ」
「嘘だ」
本当よ、そう言おうとしたが彼の唇に言葉を塞がれてしまった。一瞬唇を離すと彼の吐息が歯の隙間から漏れてきて、ふいごのように私の熾り火を掻き立てる。たまらず自分の両手を彼の背中に回し、彼のガウンにしがみつく。
「嘘つきだ」
「嘘にしているのよ、あなたが」
本当は一人でも眠れたはずなのよ。彼の手が私の髪に触れ、彼の吐息が肌に触れる。私はたちまち指先まで真っ赤に色づく。
「もう寒くないわ」
抱え上げられベッドに落とされる。真っ直ぐに圧しかかってくる彼の体に両手を伸ばし、私は少しの熱も逃さないよう彼の肌を求める。自分の爪が湯に浸したときのように桃色に染まっているのが見え、次の瞬間自分の体の中で真っ赤な火花が散って見えた。

Lovely 第46話 charm

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向かいの部屋の彼がベッドに入る前の最後の煙草を吸いに階段を下りていった。足音でわかる。私はベッドサイドテーブルの上の自分の携帯電話を取り上げて時間を確認する。日付が変わって1時前。今日は1時には寝ようと決めたのだろう。
私は布団を引き上げてカーテンの隙間から漏れる街灯の光から身を隠す。少しでも明るいと眠れないのだ。だから昼寝もしないし、電車でも飛行機でも寝ない。ときどき車の助手席で目を閉じているときはあるが、それはウインドスクリーンから真っ直ぐに差し込む光が眩しすぎるからだ。
細く開けた自分の部屋のドアの間から冷たい夜気に混じって彼の煙草のにおいが漂ってくる。彼の体からはいつもこの煙草のにおいがする。私はもう一度寝返りを打って、思い切って身を起こした。今夜はぞっとするほど寒い。このまま布団の間で頑張っていればそのうち眠れるだろうが、夢の始まる前にいつもの強迫観念が始まってしまいそうだ。
彼の足音が聞こえる。戻ってきたのだ。布団を跳ね除けてドアに向かう。
「まだ起きていたの?」
眼鏡を外しているのと家の明かりをほとんど落としてしまっているので、彼の輪郭がぼんやりと白い壁に映っているのが見えるだけだ。ガウンを着ているのかパジャマを着ているのかもわからない。ただ、彼の体から漂ってくる煙草のにおいが彼がそこにいることを知らせている。
「うん」
私はただ頷いて彼の影に向かって両手を差し出す。
「悪い夢を見ないように、おまじない」
「おまじない?」
素直に言えばいいのにと彼は笑いながら私の両手を自分の脇に通して私の頭をぐっと引き寄せる。彼の胸に額をこすりつけて私は頭を撫でてと懇願する。
「これもおまじないなの?」
「そうよ。私の頭に取り憑いた悪いものを払ってほしいの」
それができるのはあなただけなの。
「髪が濡れているよ…、きちんと乾かさないと」
悪夢より先に風邪を引いてしまう。
「平気よ」
暗がりの中でほとんど彼が彼なのかもわからない中、私は差し出した両手を受け取る人間にすべてを任せている。私には二つの目があるが明かりを点けて真実を確かめることはない。この弱さが、光から逃げる弱さが本当は悪夢を呼び寄せているのに、私はそれでも知らないふりをする。おまじないの方が簡単だからだ。彼の煙草は焚かれる香、優しい言葉は呪文の詠唱、彼は私の呪い師で私に不幸も幸福も与えてくれる。私は彼の言葉に翻弄されて当座の苦しみに喘ぐだけだ。

Lovely 第45話 door

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朝、起きてこない彼が心配で彼の部屋の前を私は行ったり来たりしている。彼の仕事は時間が不規則で、遅出の日はともすると昼近くまで部屋にいることがある。それはそれでかまわないし、私に気にすることでもないのだけど、やっぱりどうしても気になってしまう。
彼の部屋のドアを勝手に開けて一度こっぴどく叱られたことがあるので、それ以来彼の部屋のドアが半開きになっていないときは(それが彼のサインなのだ)私は猫のようにドアの前で丸まって彼が部屋から出てくるのを待っている。一時間待つときもあるし、二時間待つときもある。最近は新聞とコーヒーを抱えて、床は冷えるのでブランケットにくるまって彼が部屋から出てくるのを待っている。
彼は知らない。彼がドアを開ける気配を察するやいなや私は新聞とコーヒーマグを抱えて立ち上がり、ブランケットは肩にかけたままで、さも今キッチンから出てきたばかりの風体を取り繕うのだ。彼は私の姿を認めて、「おはよう」と声をかける。私も笑って「おはよう」という。彼の姿を確認すれば、それで私の不安は消える。それで十分なのだ。
彼は私が毎日のようにドアの前で待っていることを知らない。気づいているのかもしれないが、彼は私にそう言わない。私も言わない。もし彼が私のコーヒーマグに手を触れて、それが冷え切っていることに気づけば…、彼は何と言うだろう。待つな、と言うのだろうか。

Lovely 第44話 extinction

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あれほど苦しんでいたはずなのに、あれほど悩んだはずなのに、まだ足りなかったらしい。彼からのキスひとつで私はすっかり幸せになってしまった。彼の腕の中で自分の胸にまたあたたかい血が通い始めたのを感じる。失って久しかった自分の鼓動が聞こえる。自分で自分自身を苦悩の火に投じたのに、私の胸にはまだ心臓が燃え尽きずに残っていた。
「抱いていて」
震える両手で彼の頬を挟む。私の冷え切った手に彼の熱が伝わってくる。私の両手にはまだ神経が残っていた。
「もう少しだけ」
涙につぶれた視界に光が戻る。彼の両目が私を見ている。私もじっと見つめ返す。
「僕のことを愛しているの?」
「愛しているわ」
私の耳に音が戻る。私の喉に声が蘇る。
「愛しているわ」