Lovely 第21話 pain
Thursday, 17. July 2008, 11:59:59
鋭い痛みが胸に走る。彼のことを考えるだけで。彼の逡巡した眼差しを、彼の無骨な手を、彼の薄い唇を思い出すだけで私の胸は萎縮する。恋の甘やかな痛みとは違う。一瞬鋭い針を脇から心臓に差し込まれたようだ。一瞬ですべての思考が停まり、時間の流れにまた乗るにはしばらくの時間が必要だ。
「私のことを愛しているとは一言だって言ってくれないのにね」
彼は私を好きだと言って私を抱くけれど、愛しているとは決して言わない。
「私も彼のことを愛していないのにね」
私も彼のことが好きだと言って彼に抱かれているけれど、彼のことを愛してはいない。
「彼は私のことを愛してくれるのかしら」
私は彼の愛を求めてもいいのかしら。
「彼は私が別の人間からの愛を受け入れていることを知っている」
だから、『愛している』と言わないのだろうか。その人間からの愛が私の碇にならないことを知っていて、私がいつまでも波間に漂う流木のように自分をすり減らしながら浜辺の砂を求めて彷徨っているのを知っていて、自分の愛も結局は無益だと考えているのだろうか。
「私は彼の気持ちを裏切っているのかしら」
私は何もかも選べるほど関係に専制的ではない。私は何も選ばない。波を見て波に身を任せているだけだ。ただ、そう漂うだけの人生にも時折嵐がやってきて私の体を岩に叩きつける瞬間がある。
「この痛みは私に思いとどまるように告げているのかしら」
それとも自分自身が崩壊していく痛みなのだろうか。
「私のことを愛しているとは一言だって言ってくれないのにね」
彼は私を好きだと言って私を抱くけれど、愛しているとは決して言わない。
「私も彼のことを愛していないのにね」
私も彼のことが好きだと言って彼に抱かれているけれど、彼のことを愛してはいない。
「彼は私のことを愛してくれるのかしら」
私は彼の愛を求めてもいいのかしら。
「彼は私が別の人間からの愛を受け入れていることを知っている」
だから、『愛している』と言わないのだろうか。その人間からの愛が私の碇にならないことを知っていて、私がいつまでも波間に漂う流木のように自分をすり減らしながら浜辺の砂を求めて彷徨っているのを知っていて、自分の愛も結局は無益だと考えているのだろうか。
「私は彼の気持ちを裏切っているのかしら」
私は何もかも選べるほど関係に専制的ではない。私は何も選ばない。波を見て波に身を任せているだけだ。ただ、そう漂うだけの人生にも時折嵐がやってきて私の体を岩に叩きつける瞬間がある。
「この痛みは私に思いとどまるように告げているのかしら」
それとも自分自身が崩壊していく痛みなのだろうか。