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620 Drunkard Laboratory

あの1投は記憶されていない

 オリンピックはあまり見ないつもりではいたのだが,結局ちらちらと見てしまう。

 BSを見るといつもカーリングをやっているのでついつい見ていた。なんか予選で負けたらしいのだが,負けた後のインタビューで日本の女子の選手がこんなことを言っていた。

 「カーリングのこと知ってもらえた(大意)」

 あれ,みんなカーリングってあまり知らなかったのか。確かにオリンピック以外で目にする機会というのはなかなかないのだけど,あの面白さを知らないってこともないんじゃないかと。
 すでに8年前の長野のアメリカとのタイブレークは忘却された記憶なのだろうか。敦賀選手のストーンに誰もが震えた。そしてアメリカの選手の最後の1投に呼吸を忘れ,その行方を見つめ,静止するその瞬間を見届けたのではないのか。

 結局オリンピックのときだけ盛り上がって,すぐに忘れてしまうのだろう。というより,メディアに盛り上がらされるだけ盛り上がらされるのだが,オリンピックが終わったとたんメディアは全く扱わなくなるので目にする機会が無くなり忘れてしまうというのも当然か。
 メディアがオリンピックのときだけ扱うのはともかくとして,その中で「面白さを知ってもらえた」とか「感動した」という発言を簡単にすべきではないだろう。そのような発言をした以上はオリンピック後もカーリングを扱いその面白さや感動を伝え続る必要性があるはずだ。扱うというのはもちろん競技自体を取り上げることで,間違っても民放の放送局にありがちな競技とは無関係な内容のワイドショーなりバラエティに選手を出演させることではない。
 
 
 メディアはどの競技に関してもあまりにもオリンピックというものを重要視しすぎではいないだろうか。4年に1度のオリンピックを勝つというのはある意味ラッキィであり,最も強い選手が勝つわけではない。どんな凄い選手だってシーズン中に何度か負けるのだから。コンディションのピークをオリンピックに持っていくからといっても,どの選手もそうするのだから結局条件はシーズン中のゲームと一緒。4年に1度だから多少は価値があるのは認めるけど,最も評価すべきはやはりシーズンの総合チャンピオンだと思う。スピードスケートの男子1000mを勝った選手が

 「出るレースは全部勝つ。オリンピックも他のレースもかわらない(大意)」

と言っていた。賞賛すべき選手。こういった考え方がオリンピックに勝つ確率を高めるのだとも思う。

 メディアもオリンピックで勝つことと,シーズンの総合チャンプのどちらを高く評価すべきかを考え直してほしい。オリンピックなんてシーズン中のたかだか1試合なのだから,シーズンチャンプが勝つ確率が最も高いのは当然であり,シーズンでほとんど勝てないような選手がラッキィで勝つ確率なんて凄く低いということを客観的データとして伝えるべきだ。そういったデータを与えずに「メダルが取れる」などという偽りの情報を公共の電波なり媒体を使って流すという行為は某堀江氏と大差はない(あくまでも行為の質であり,他者の損得は関係ない)。メディアは氏が逮捕されたと同時に一斉に批判を始めたのだがその権利はない気がする。

 少し話がそれた。とにかく,このオリンピック偏重主義と捻曲がった愛国心ははどうにかならないものか。

「最後の記憶」 綾辻行人「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎

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